【2025】サピックス 4月マンスリー確認テスト(5年) 国語[大問4]物語文を解説

[大問4]物語文『心が広くて強い人』(次良丸忍) 文章の概要

あらすじ

六年一組で起きた落書き事件。安達は犯人ではなかったが、疑いをかけられたことで自ら罪をかぶり、ノートを弁償することに。その行動を見ていた村上は、安達の優しさに気づき「心が広くて強い人」と称える。ところが、別の友人・朝倉の言葉に影響され、安達は村上が犯人なのではと疑ってしまう。安達は自分の発言で村上を深く傷つけてしまったことを悔やみ、心の支えとなっていた「心が広くて強い人」という言葉も、力を持たなくなってしまったのだった。

登場人物とその特徴

  • 安達(ぼく):主人公。クラスで起きた落書き事件の濡れ衣をかぶる。
  • 村上れい子:明るく活発なクラスメート。安達を信じる言葉をかけた。
  • 江古田:被害者の女子。思い込みが強く、事件の発端となった。
  • 朝倉:安達の友人。疑り深く、村上が犯人だと決めつける。
  • 森里あかね:事件の真犯人。落書きの犯行が後に発覚。

比喩表現と、比喩が表すもの

「ぼくの心の真ん中で、かたい種になった」
→ 村上さんの言葉や思いが、安達の心の中に強く残り、いつか大事な考えや行動につながるかもしれない気持ちになっていること。

「どんな芽が出て、どんな葉がしげり、どんな花がさくのかはわからない」
→ その思い(種)が、これからどう育って、どんな未来や行動につながっていくかはまだ分からないという気持ち。将来への可能性や成長を表している。

「心の真ん中にあったあのかたい種は、花どころか芽を出すことすらなく、くさってしまったのだ。」
→ 村上さんの思いを信じ続けることができず、希望や信念として育つ前に、気持ちが消えてしまった・自分に失望してしまったことを表している。

物語の主題

この作品では、安達の心が大きく揺れ動きます。
・村上に感謝されて自信を持つ
・村上が犯人かも…という疑念に苦しむ
・疑ってしまったことで後悔する


この感情の揺れに注目することで、作品の主題が見えてきます。
「人を信じることの大切さ」と「自分の感情をどう扱うか」が主なテーマです。主人公は村上を疑ってしまったことを深く後悔し、「信じる心」「冷静な判断」の重要性に気づきます。このような心の成長が丁寧に描かれている作品です。

重要問題解説 問2・問3・問8

問2・問3・問8は関連性が高く、いずれも「かたい種」などの比喩表現を一般的な形に言い換えることができないと解くことが難しい問題でした。それぞれ解説していきます。

問2・選択問題 ―線①「ぼくは不思議と腹がたたないのだった」とありますが、なぜだと考えられますか。

■(問われていること)を確認する
この問題で(問われていること)は「なぜだと考えられますか」という部分です。「なぜ」と聞かれた場合は心情を問われている場合が多いです。まずは本文にもどり、自分で答えを考えましょう。

選択問題は最もらしい選択肢に惑わされないため、選択肢を読む前に自分で考えることが大切です。

■本文を読んで答えを考える

(―線部①付近の文)P9・1行目から
 それでも、ぼくは不思議と腹が立たないのだった。なにしろぼくは、「心が広くて強い人」なんだから。
 きのう村上にいわれた言葉が、ぼくの心の真ん中で、かたい種になっていた。江古田になにをいわれても、それにふれると心が落ちつく。そして体中に、あたたかな力がみなぎるのだ。

主人公が腹が立たなかったのは、「心が広くて強い人」という言葉が心の中で「かたい種」となったからだと書かれています。ここで使われている「」は、これから育っていく可能性をもったものの象徴です。そして「かたい」という言葉からは、主人公の中にしっかりと根づいた強い思いが感じ取れます。
つまり、「心が広くて強い人」と言われたことで、主人公の中に「そうなりたい」「そうあるべきだ」という思いが芽生えたのです。この気持ちはまだ目に見える変化ではありませんが、確かな決意として心に根づき、自信となっていることが読み取れます。

■選択肢のまちがいを見つけて正答を導く
本文の比喩表現から読みとれることを考えたので、選択肢を確認していきます。子どもはどの選択肢も合っているように思ってしまいがちなので、選択肢のまちがっている部分を見つけていくことが大切です。

(ア)✕江古田に何を言われても気にならなかったから
→主人公は江古田の言葉が気にならなかったのではなく、「心が広くて強い人」という言葉によって広い心で気にしないことができたと考えられる。

(イ)✕他の人たちに非難されても
→江古田に嫌なことを言われても心を乱さずいたれた場面なので、他の人たちに非難されても我慢できるという部分がまちがい。

(ウ)✕村上の評価を下げるようなことはしたくない
→村上の評価を下げまいとしているわけではなく、村上からもらった言葉で腹を立てずにいられた場面なのでまちがい。

よって、正答は(エ)となります。

(エ)自分の行動を村上にほめられたことで自信が生まれ、江古田に不快な態度をとられても、広くて強い心で受け流すことができたから。

(ア)と迷ったかもしれませんが、(ア)村上に心が広い人とほめられて「うれしくなった」よりも、(エ)「自信が生まれ」という記述のほうが「かたい種」の比喩をより正確に表していると言えます。

二択で迷った時には、2つの選択肢のちがいに注目することで、どちらがより相応しいか考えましょう。

問3・選択問題 ―線②「どんな芽が出て、どんな葉がしげり、どんな花がさくのかはわからない」とありますが、ここでも「ぼく」の気持ちはどのようなものですか。

■(問われていること)を確認する
この問題で問われているのは、「ぼくの気持ちはどのようなものですか」という点です。「どのようなもの」という聞き方は、言い換え問題であることに注意しましょう。ここでは、「芽」「葉」「花」などの比喩表現を、より一般的な言葉に言い換えて、主人公の心の状態や気持ちを説明できるかが問われています。


■本文を読んで答えを考える
―線②の部分は、比喩表現を使って主人公の心の変化や未来への希望を描いています。「どんな芽が出て…」という言い回しは、これから自分がどう変わっていけるのか、どのように成長できるのか、という期待や希望に満ちた気持ちを表しています。
つまりこの時点の「ぼく」は、「心が広くて強い人」と言われたことで前向きな気持ちになっており、「これからよい自分に変われるかもしれない」という自信や期待が芽生えているのです。


■選択肢のまちがいを見つけて正答を導く
選択問題はまちがっている部分を見つけていくことが大切です。選択肢が誤りであると判断できる理由は、以下の通りとなります。

(イ)✕ 自分のよさを認められてうれしく思っている
→この選択肢は、「うれしく思っている」という現在の感情に焦点を当てていますが、―線部の比喩は未来志向の気持ちを表しています。変わっていこうとする意志や希望が読み取れないため不正解です。

(ウ)✕ 将来どのような人間になればいいか悩んでいる
→この選択肢は、「悩んでいる」とあるように、否定的・不安定な心情を表していますが、本文の―線②は不安や悩みではなく、前向きな期待を込めた表現なのでまちがいです。

(エ)✕ 人に何を言われてもくじけないと決心している
→ ―線部は「決心している」という強い意志ではなく、まだ自分の中で芽生えた思いがどんな形になるのかもわからない段階なのでまちがいです。


■正答を確認する

(ア)〇これからの自分の心の成長を期待している
→この選択肢は、心の中に生まれた種=新しい気持ちや可能性が、これからどのように育つのかを楽しみにしている、という本文の内容と合致しています。

「芽が出て、葉がしげり、花がさく」という比喩は、心の成長・変化への前向きな期待を表しているため、この選択肢が最も適切と判断できます。

問8・記述問題 ―線部⑦「心の真ん中にあったあのかたい種は、花どころか芽を出すことすらなく、くさってしまったのだ」とありますが、この表現からどのようなことがわかりますか。「かたい種」が「くさってしまった」理由をふまえて説明しなさい。

■(問われていること)を確認する
この問題で問われているのは、「この表現からどのようなことがわかりますか」という点です。「どのようなこと」という聞き方は、言い換え問題にあたります。つまり、「かたい種がくさった」という比喩が何を意味するのか、それによって主人公にどのような変化が起こったのかを、本文を根拠にして説明する必要があります。


■比喩表現がどのようなことを表しているか考える
比喩表現を一般的な言い方に言い換えてみましょう。

「かたい種」:主人公の中に芽生えた「心が広くて強い人になりたい」という希望や、自分への期待・自信
→問2の選択問題と深く関連しており、選択肢が「かたい種」を「自信」と表していることに気づけると、記述する際に役立ちます。

「くさってしまった」:その希望や期待が、うまく育たずに失われてしまった・ダメになってしまったこと。比喩的に「挫折」や「自信喪失」を表しています。


■主人公の心情が変化した理由を考える
「かたい種」と「くさってしまった」を言い換えただけでは、字数が足りませんね。この記述問題では、どんな内容をつけ足すとよいのでしょか。
「かたい種」がくさってしまったのは、主人公が村上を信じきれず、疑ってしまったことが原因です。結果として村上を傷つけ、自分も強くて広い心を持った人間ではなかったことに気づき、自己嫌悪や失望を感じていることがわかります。
この記述問題では、この原因と結果のつながりを明確にして、読んだ人が理解できるように説明することが大切です。

初めて読んだ人にも伝わる文を書くことが、記述問題のポイントです。

■記述をまとめる
上記のような内容をまとめて、記述を完成させましょう。

[正答]
村上を信じ切れずに傷つけたことで、自分は心が広くて強い人なのだという自信が、心の成長につながることなく「ぼく」から失われたということ。


以下のような解答も考えられます。ご参考になさってください。

[正答例]
ぼくは村上さんに「心が広くて強い人」と言われて自信をつけていたのに、村上さんをうたがい深く傷つけたことで、自信や希望を失ってしまったということ。

このように、「かたい種」が意味する主人公の前向きな気持ちと、それが「くさった」=失われた理由をセットで説明することが、記述のポイントです。

サピックス 4月マンスリー確認テスト(5年) 物語文まとめ

今回の物語はいかがでしたでしょうか。
学校生活の中で起きた些細なすれ違いや誤解が、主人公の心に大きな影響を与えていく様子が、繊細に描かれていました。特に、「心が広くて強い人」と言われた一言が主人公の心に深く残り、その後の言動や感じ方を変えていった点は、読者に強く印象づけられたことでしょう。

この物語で、ぜひお子さんと一緒に話してみてほしいのが、「信じることの大切さ」や「自分をどう受け止めるか」というテーマです。誰かを疑ってしまったことで自信を失ったり、期待された自分になれなかったと感じて落ち込んだり・・・子どもたちも、日々の中で同じような経験をしているかもしれません。

大切な人を信じることの大切さを考えるきっかけになる物語だったのではないでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました