
模試は結果が出てからの振り返りが大切です。説明文よりも正答率の低かった物語文を解説していますので、参考になさってください。
[大問2]物語文『ツバメの親子はどこにいる』(樫崎茜) 文章の概要
物語のあらすじ(要約)
小学五年生の主人公「オレ」は、目の不自由な母親が弟・音晴の入学式に出席することで、周囲から特別な目で見られるのではないかと不安を抱いています。
入学式当日、母親は白杖を持って堂々と入場しますが、その姿に周囲の視線が集まり、主人公は苦しさを感じます。家族を大切に思う一方で、人と違うことを恥ずかしいと思ってしまう自分に葛藤しながら、弟もまた同じ苦しみを抱えていることに気づく物語です。
登場人物とその特徴
- オレ:小学五年生の主人公。目の不自由な母親を大切に思う一方で、周囲から特別な目で見られることに苦しみ、家族への愛情と世間の視線との間で葛藤している。
- 音晴(おとはる):主人公の弟。今年小学一年生になる。入学式の日に学校へ行きたくないと泣き出し、母親が周囲から目立ってしまうことに戸惑いや不安を感じている。
- 母ちゃん:主人公と音晴の母親。目が不自由で白杖を使って生活している。
- 滝口真琴(たきぐち まこと):主人公のクラスメイト。入学式でピアノ伴奏を担当する。先生から母親の付き添いを頼まれる。
- 三橋先生:主人公の担任教師。母親を安全に案内しようと配慮するが、主人公は「特別扱い」と受け取り、葛藤のきっかけとなる。
難しい言葉・重要語句の解説
- 白杖(はくじょう):目の不自由な人が、安全に歩くために使う白い杖。
- 特別待遇(とくべつたいぐう):ほかの人とは違う特別な扱いを受けること。
- 権幕(けんまく):怒ったり勢いよくまくしたてたりする、相手を圧倒するような激しい様子。
- しんみょう(神妙):反省したり申し訳なく思ったりして、おとなしく真面目な様子。
- 駄々をこねる(だだをこねる):思いどおりにならないと、泣いたりわがままを言ったりすること。
- 勘づく(かんづく):隠していることや本当のことに気づくこと。
物語の主題
この作品で描かれているのは、「周囲の目を気にする気持ちと、自分の本当の気持ちとの葛藤」です。
主人公は、目の不自由な母親を嫌っているわけではありません。しかし、「ほかの家族と違うと思われたくない」「特別扱いされたくない」という気持ちが強く、母親が白杖を使ったり、周囲から特別な配慮を受けたりするたびに苦しみます。
特に重要なのは、主人公の心の中に「母親を否定したいわけではない」という気持ちと、「周囲の目が気になってしまう」という気持ちが同時に存在していることです。このように、相反する二つの感情が同時に描かれている場面は、中学受験の物語文でよく問われます。
[大問2]重要問題解説 問1・問2・問4
今回は、特に正答率の低かった3問を解説します。
―線部付近を注意深く読み取ることが求められる問題であったため、注目すべきポイントをしっかりと確認しておいてください。
(問1)―①「しおれた朝顔みたいに、机につっぷした」とありますが、このときの「オレ」の気持ちを説明しなさい。
■(問われていること)を確認する
この問題で問われていることは、「『オレ』の気持ち」です。
「しおれた朝顔みたい」という比喩表現や、「机につっぷし」ている様子から主人公はマイナス心情であることがわかりますね。この時の心情を詳しく読み取っていきましょう。
■(問われていること)にできるだけ短く解答し[記述の核]をつくる
記述問題のコツは、(問われていること)にできるだけ短く解答することです。
【1】「だれ」に対するマイナス心情なのか確認する
―線部を含む一文を確認すると「……そんな想像をした途端、オレは自分がいやになって、しおれた朝顔みたいに、机につっぷした。」となっています。つまり、主人公は自分に対するマイナス心情を抱いていることになります。
【2】指示語の内容を明らかにする
では、「……そんな想像」とはどのような想像でしょうか。直前を読むと「音晴をなだめるために母ちゃんは白杖を持ってこないかもしれない」と想像しています。つまり主人公は、「母親に白杖を持ってきてほしくない」と考えたのです。
【3】マイナス心情の原因を考える
では、なぜ「母親に白杖を持ってきてほしくない」と考えたらマイナス心情になるのでしょうか。
母ちゃんにとって白杖は絶対に必要なものです。その白杖を、自分が周囲の目を気にするあまり「持ってきてほしくない」と思ってしまったことに対して、マイナス心情になったと考えることができます。
【1】~【3】の流れを整理します。
目が不自由な母ちゃんが白杖を持っていることは当たり前のこと
だが、主人公は身勝手な理由から「持ってきてほしくない」と思った
主人公は自分に対してマイナス心情を抱いた
身勝手な理由から「持ってきてほしくない」と思った時のマイナス心情を考えます。
よって、「自分(または身近な人)に向かう」心情である、自己嫌悪・情けないなどがふさわしいと考えられます。
この心情を[記述の核]として、記述を組み立てていきましょう。
■[記述の核]に必要な要素をトッピングする
先ほど考えた[記述の核]に必要な要素をトッピングしていきます。
前述した【1】~【3】の流れにそって記述していくことが重要ですが、
その際に[対比]や[理由]をトッピングする意識で考えをまとめると、記述が書きやすくなります。
[対比]~なのに、~だが
→ (例)母ちゃんにとって白杖は必要なのに
[理由]~だから、~なので
→ (例)白杖をついている母ちゃんが注目されることが耐えられないと思ったので
このように、必要な要素をつけたし、記述を完成させましょう。
【模範解答】
白杖は目の不自由な母ちゃんに必要なものなのに、入学式で母ちゃんが注目されないようにするために母ちゃんに白杖をもってこないでほしいという利己的な願いをもったことを情けなく感じている。

まずは記述の核を考えて、そこに必要な要素をトッピングしていくしていく手順を徹底し、練習しましょう。
(問2)―②「父ちゃんから、さんざん教えこまれたからだ」とありますが、自分の名前を漢字で書けるようにおしえこんでいることから、父ちゃんがどのような考えを持って子どもを教育しているとわかりますか。説明しなさい。
■(問われていること)を確認する
この問題では、「どのような考えを持って子どもを教育している」と問われています。
父ちゃんが、入学したばかりの主人公が漢字で名前を書けるほど熱心に教えていたのは、どのような考えがあったからなのでしょうか。関係ありそうな記述を見つけましょう。
■「父ちゃんがさんざん教えこんだ」理由を考える
「父ちゃんが教えこんだ」のはなぜか、直接的に本文に理由が示されているわけではありません。
そんな時は、本文から考えられる根拠を導き出すことが重要です。
―線部直後の以下の文に注目できたでしょうか。
[本文 P9・14行目~]
自分の名前を漢字で書けることを自慢することだってできたはずなのに、どうしてか、オレにはそれができなかった。むしろみんなとちがうことがいやだった。家に帰って、泣いて頼んだものの、母ちゃんは「自分のことは自分でやろうね」というばかりで、絶対にネームペンをもとうとしなかった。
母ちゃんが「自分のことは自分でやろうね」というばかりだったのは、目が見えないので書いてあげることができないからです。また、父親が漢字を教えこんで書かせたことと共通する考えがあるとも読むことができます。
■[記述の核]にトッピングして記述を完成させる
上記の内容から、父がどのような考えを持っているのか考え、[記述の核]を完成させます。
[記述の核]→ 母ちゃんが身の周りの世話ができないから自立できる子に育てようとした
そこに、上記で考えた理由をトッピングして完成させましょう。
【模範解答】
目の不自由な母ちゃんにたよらず、子どもが自分でできることを増やしていこうという考え。
(問4)―線④「保護者からはなぜか、まばらな拍手がきこえてきた」とありますが、拍手がどのような意味を持っているのかをふまえて、このときの「オレ」の気持ちを説明しなさい。
■(問われていること)を確認する
この問題で問われていることは、「『オレ』の気持ち」です。
さらに、「拍手がどのような意味を持っているのかをふまえて」という条件もあります。
■(問われていること)にできるだけ短く解答し[記述の核]をつくる
記述問題のコツは、(問われていること)にできるだけ短く解答することです。
主人公の気持ちを考えるため、―線部を含む一文をしっかりと読み取りましょう。
[―線部を含む一文]
母ちゃんはいつもどおり歩いているだけなのに、保護者席からはなぜか、まばらな拍手がきこえてきた。
「母ちゃんはいつもどおり歩いているだけ」という部分と、―線部が対比関係になっていることがわかります。簡単に言うと以下のような対比関係になっています。
・母ちゃんはいつもどおり歩いているだけ → 通常
・保護者席からはなぜか、まばらな拍手 → 異常
つまり、母ちゃんが歩いていることを、保護者は「普通ではない(特別な)こと」ととらえて拍手をしていることになります。
・母ちゃんは普通に歩くことができる
・保護者は母ちゃんが歩くことを特別なことだと思っている
つまり、保護者が目が見えない人は健常者のように当たり前のこともできないと思われていると、主人公は感じているのです。
このような状態を目の当たりにした時の主人公の心情は、違和感・納得できない等が考えられます。これを[記述の核]としていきましょう。
■「拍手の意味」を考え、記述を完成させる
この問題の条件である「拍手の意味」は、先ほどおさえた内容をもとに考えていきましょう。
母ちゃんが歩いていることを「特別なこと」「すごいこと」だと思って拍手している保護者の気持ちを考え、記述を完成させましょう。
【模範解答】
母ちゃんはいつも通り歩いているだけなのに、保護者たちから賞賛されていることにとまどい、賞賛されるのは目が不自由だと見える人と同じことはできないと決めつけられているように感じて納得できないでいる。
まとめ
今回解説した3問は、いずれも―線部の前後を丁寧に読み、人物の気持ちや考えを本文の表現から導き出す問題でした。
記述問題を解くときは、まず設問を読んで、「何について答えるのか」をはっきりさせましょう。そのうえで、問われていることにできるだけ短く答え、[記述の核]をつくります。
今回の問題では、次のような読み取りが重要でした。
・比喩表現や行動から、人物の心情がプラスかマイナスかを判断する
・「そんな」などの指示語が何を指しているのかを確認する
・本文に理由が直接書かれていない場合は、前後の言動から考えを推測する
・対比に注目し、どのような対比か明らかにすることで読みを深める
記述問題に抵抗感を抱くお子さんも多いかと思いますので、まずは[記述の核]をつくることろから挑戦してみてください。
また、こちらの記事で記述問題の書き方を解説しています。
参考になさってください。
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